久しぶりの行楽日和。少し、暑いくらいの日だった。
特に出掛ける予定もなく、家でゆっくり好きなことをしながら過ごしていたが
明日の朝のパンだけでも買って来ようと思い、近所のスーパーまで行こうと家を出た。
その途中にある家々の庭を眺めながら歩いていたら
急に「チャポン」と言う音がした。
チャポン?
チャポンと言うのは何かが水に落ちた時の音であって
周りには池も川も無い。
いや、小さい川はさっき通り過ぎたが、もう10m以上は通り過ぎているはず。
それにその音は道路の路面で聞こえた気がした。
道が二股に別れた、いわゆる、そこは辻と言う所だった。
周りを見ても誰もいないし、何も無い。
でも、音がした辺りをよ〜く見てみると何かが路面にいる。それは綺麗な若草色をしたカマキリだった。
何か変だなとは思いながらも、私は素通りするつもりだった。
ただ、ここは車がよく通るので、(このままだとつぶされるぞ。早くどきなさい。)と、カマキリに心のなかで呟いた。
まして、今日は人通りもある。だから誰かに助けてもらうんだよ、と言い聞かせて(カマキリにか自分にか?)通り過ぎたのだが、急に人通りが無くなり誰も通らなくなった。
次の角で大きい通りに出ると言う所になって、気になって辻まで戻ってしまった。私にしては珍しい事だった。
手で掴めるほど私は昆虫好きではないので、近くに転がっていた大きめの枯れ葉でカマキリを転がしながら道の端まで寄せていった。
そうやって転がしていった感じでは、反応が鈍かったと言うか動きが鈍かったので、もう寿命が尽きる頃だったのかもしれない。かえって余計なお世話だったのかも、とも考えた。
買い物の帰り、そこを通らず帰ることも出来たのだが、今日はヤケに気になって同じ所を通って帰ることにした。
しかし、さっきの辻の辺りを探したけれどあのカマキリは居なかった。
あの弱々しい感じでいったいどこに行ったと言うのだろう。まぁ、羽根があるからどこかへ飛んで行ったとしても不思議な事でも無いけれど。